単元の枠組みについて(令和6年度研究発表会に向けて③)
公開日: 2025年1月2日木曜日
算数科の津川です。
今回は単元の枠組みについてまとめていきます。前回のブログにも書いたのですが、まだ単元構成について迷っているところがたくさんあります。ここに書きながらも「ここはこうしたほうがいいかな」など常に変わっているところもあります。改めて、「言語化してみることでうまくいかないところがどんどん見えてくるなあ」と思っているところです。おそらく、単元を始める直前もマイナーチェンジを繰り返していると思いますし、単元中も子どもたちの様子から変更することが多々出てくると思います。ここの部分は本校の研究サブテーマとも大きく関わってくるところなのではないかと思っています。その様子も併せて、先生方にはブログから見取っていただけると幸いです。
「つまようじタワーを設計しよう!」という単元について説明する前に、つまようじタワーについて説明します。私の製作途中のタワーの写真は、前回のブログに載せています。以前から「つまようじタワーコンテスト」については知っていたのですが、昨年の10月に初めて、崇城大学様の「つまようじタワー耐震コンテスト高校生大会」を参観させていただきました。大会前に高校生や高校の先生方、大学の先生方に色々と質問をさせていただいたのですが、1つのタワーの中にたくさんのアイデアがつまっていることを実感いたしました。中には、300時間近くかけて製作されている方もいらっしゃってその熱意を感じました。大会規定で高さの下限設定や重さの上限設定などあるのですが、個人的には、つまようじ1本分の重さから何本のつまようじが必要なのかを積算していることにとても興味を惹かれました。素敵なタワーの背景には緻密な数式がたくさん隠れているのだなと感じました。そして、大会本番、重量測定を通過したタワーたちが実際に揺れを起こすことができる装置の上に設置され、さらに重りを載せられて、揺らされていきます。次々に倒されていくタワーの中で耐え続けた、たった1基のタワーが優勝になります。先ほど挙げた数式だけでなく力学や振動など様々な知識がそれぞれのタワーを支えていたことと思いますが、その一瞬にかけて地震に耐えうる構造を考え、作り上げてきた高校生たちにとても胸を打たれたことを覚えています。
そのようなつまようじタワーについて、小学生にもその学びの入り口に立つことができるのではないかと考えました。日本、そして熊本の地は地震を避けて生きることはできません。また、5年生は社会の学習において自然災害の学習もします。総合的な学習の時間では、環境や自然災害に目を向けて、5月から探究を進めてきた姿もありました。これらの学びをつまようじタワーに出合わせることにより、防災、減災の技術に触れるいい機会にもなるのではないかと感じています。
また、算数の側面においては、本学習はよく下の写真のような、4つの棒で正方形をつくり、その正方形を1つ2つ3つ・・・と拡張していく際の増え方に着目して立式をしていきます。
⬜︎を正方形の数、△を棒の数だとすると、3つずつ増えることに着目して1+3×⬜︎=△もしくは、4+3×(⬜︎ー1)=△というような式が導かれ、それぞれがどのような増え方に着目しているのかを式をもとに考察していくような流れになります。この活動を今回は立体で行っていくことになります。立体だからこそ、1つ分の本数が多くなることで、より式に対してアプローチがしやすくなるのではないかと考えました。平面から立体にしたことで増え方をイメージすることの難しさが生じることと思いますが、だからこそ数学的表現(数で表すことのよさ)を実感できるのではないかと考えます。また、設計図を描いていくのですが、実際に具体物(自分たちのタワー)も手元にある状態で製作を進めていきます。具体物自体は子どもたちが角柱と円柱の単元を通して手にして触ってきたものであるので、形自体は馴染みのある状態で本時を迎えていくような形になります。したがって、いきなり立体図形と出合うわけではないことが、その難しさを緩和させることにつながっていきます。
また、高校生が製作していたタワーを見ていると、様々な形が隠れていました。この形が鍵を握っていることと感じています。今回は、図形領域の中でも様々な角柱に子どもたちは触れていきます。(円柱はつまようじではなく紙媒体にて触れていきます)その学びの中で重さに強い構造や揺れに強い構造に着目していくこともできると考えました。
ここまで、つまようじタワー自体のことについて触れてきました。ここから本題の単元の枠組みについて説明いたします。
子どもたちがそのまま、本大会に規定通りに製作を進めてしまうと前述の通り、多くの複雑さが入ってしまい、活動の難易度が上がると同時に、算数の本質にも迫りにくくなってしまうと考えました。そこで、社会や総合的な学習の時間を絡め、自然災害のことからつなげて防災や減災への取り組みへと目を向けていきます。その中で、つまようじタワーコンテストの実際の様子を、子どもたちに動画によって観せようと思います。このような動機が高まった状態で、「つまようじタワーづくりを設計しよう!」の単元に入っていきます。
今のところ考えている枠組みは次の2つです。
・つまようじや土台は事前注文制(崇城大学様へお願いする予定です。)で、つまようじの両端は約1cmずつ切ること
写真の上がそのままのつまようじ、下が約1cmずつ切断したつまようじになります。
・15cm×15cm幅で、各階層の形は同じにすること
つまようじの本数や土台を提供していただく形をとり(予定)、その中で制作していくという文脈をつくりだします。また約1cmは本大会規定と同じですが、つまようじ同士の接着がしやすくなります。
上の写真のようにして土台を接着し、下の写真のように接着をしていきます。速乾のボンドを活用すると、比較的簡単に接着することができました。
15cm×15cmの幅も規定通りの幅になります。また、各階層が同じ形というところが今回の算数の本質へと向かうポイントになります。これにより、増え方がわかりやすいようにしました。
枠組みはこの2つに絞りました。重りの制限に関しましては、つまようじの本数と総重量の比例関係が見えてしまい(接着剤の重さによる他の変数も存在しますが)、違う関数が生じてくることで、子どもたちが働かせる数学的な見方・考え方が交わり得なくなることを想定しました。また高さ制限をなくすことで、「どこまでも高く作ることができる」という数学の世界へと誘いやすくしました。しかし、「ただ高く作れば良い」という思いは社会や総合的な学習の時間、つまようじタワー耐震コンテストの動画を観た経験が”制限”として生きてくるのではないかと考えています。その姿が、問題解決から得られた結果に対する意味付けを行うことにつながると信じています。
ここまで、つまようじタワーと枠組みの紹介を行ってきました。
この1年間、高学年だからこその具体的操作の有効性についても主張を行ってきました。この単元だからこその具体物操作の有効性について、次回は詳しく説明することができればと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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