「つまようじタワーを設計しよう!」8時間目(R6年度研究発表会本時)

公開日: 2025年2月27日木曜日

 算数科の津川です。

 ここでは、研究発表会当日の子どもたちの学びの様子をお伝えしていきます。


この時間は、このオリジナルタワーの共有から始めました。

この六角柱を作っている班の子が振り返りで式を書いていました。その振り返りを共有していきました。
C「六角柱を作りました。私たちは5階まで作りたいから、12×5で60本、つまようじがいることがわかりました」
C「5階まで作りたい」
T「みんなは何階まで作りたいの?」
C「5階」
C「2階」
C「4階」
C「66階」
C「耐震性が低くなっちゃう」
C「高層ビルって、中に重いものを入れて揺れに強くしているって聞いたことあるよ」
C「高すぎたらダメだよね」
T「何階がいいのかな」
C「4階か5階か6階」
C「最大でも7階か8階かな」
C「高さ部門で1位を取ったとしても。耐久部門で9位だったら合計10点しかもらえないから」
C「安定性も求めないと」
T「もう一個振り返りでなんて言ってた?」
C「12×5って言ってた」
C「66個じゃない?」
C「蓋がないよ」
T「今、この式が合ってるのかなって気持ちもあるんだね」
C「今の振り返りのいいところって何かな?」
C「自分の中に公式を作ってる。例えば、この六角形で言うと、この下の部分を何回も取り付けていって、下が6本、横が6本って増えていくから、ここの12本必要で、さらにこれを5階作りたいから、12×5つまり、12×⬜︎なんですね。何階作りたいかでその⬜︎の部分が決まって、この式にもう一つ必要なものがあって、下に6本足りないから12×⬜︎+6にすると公式が完成すると思います。こんなやって公式を作ったところがいいところだと思いました。」
 振り返りを共有する中で、何階分のつまようじタワーを作りたいのか、また、数えるのではなく式によってつまようじの本数を数えているという視点を共有していきました。
 一人の子どもが、この⬜︎を使った式を説明している時、他の子どもたちはそのよさをまだ共感していない様子だったので、問い返すことなく黒板に考えを残すだけにしました。

さらにこの⬜︎を使った説明の中で、ジャスチャーによって階層の増え方を考える姿があったので、その姿も共有していきました。

T「規則性があるのかな?」
C「規則性じゃないと思う。変わり方じゃないかな」
C「規則性だと、全部同じになってしまうよ」
 この伴って変わる状況は、規則性ではなくあくまで変わり方であると表現していました。後ほど「比例」という言葉も出てきますが、数学化を行っていく過程でこの「きまり」に目を向けていきます。


T「みんなにさ、つまようじ何本必要?って聞いた時に何をしてた?1、2、3、って数えたりしていたよね。計算できるの?」
C「計算はできます」

それぞれのオリジナルタワーでは増え方を式で表したときに、同じイメージをもって話し合うことができなくなるため、モデルタワーで考えることを促していきました。

T「今のベストは8階かな?」
C「4、5、6かな」
C「7階くらい?」
T「間とって・・6だったらつまようじの本数は何本必要かな?」

 最初の指導案では30階ではつまようじは何本必要かという課題を設定していました。しかし、子どもたちの単元での学びの様子から、そんなに高いタワーは作らないことをかんじ15階まで下げました。本時では、子どもたちは耐久性に目を向けて、あまり高いタワーを作りたいとはなっていない状態でした。
これは、1階部分をこれまで作ってきたからこそ、その難しさと倒れてほしくないという思いが高まってきていたからこそであったように感じます。
 この状態で15階は何本必要かという課題を設定することができず、子どもたちの発言から「6階のつまようじに必要なつまようじの本数」にすることにしました。

ここから、子どもたちはそれぞれの班で自分たちの班に戻って考え始めました。

このように、6階であったために、図で表現することが比較的容易になり、授業の序盤は図で考える子も多かったように感じます。


図を描く際には、モデルタワーを使いながら考える姿もありました。




 班の中では、どこを1階部分にするのかを困っている班もありました。
私自身、単元で子どもたちが1階部分を作り上げていくことで、その増え方を共有することができると考えていました。
上の写真は2階部分まで作っているモデルタワーになりますが、子どもたちとどこの部分までが1階部分であるのか、また、1階部分と2階部分の間は2重構造になる部分は存在しないことを具体物をもとにして確かめていきました。
 またこの班は、表にしながらまとめている姿がありました。オイラーの多面体の定理に気づいた際にも表を使って整理をしていたグループです。この班は、複数の事象が出てきた際には表を使って整理すると規則性が見えてくるという数学的価値が根付いているように感じています。

 その後、このように表を黒板に書かせました。左側に何が増えているのかをまだ書かせていない意図としては、何が伴って変わっているのかを考えさせたかったため空白にしていました。

 ここで一度全体で考え方の共有を行いました。
C「モデルタワーの1は1階のことを表しています」
T「今のわかる?今の1は上と下のどちらを表していますか?」
C「上の方を表しています」
C「ということは、下が9本ということは、さっき言った1階の部分に必要なのは6本ということで、これを公式に表すと、、」
T「ここから公式が作れるの?」
C「はい作れます。上の段を⬜︎として、下の部分を◯とします」
T「この後、どんな公式が出てくると思う?」
 一度それぞれの班でどのような式になるのかを予想させていきました。この話の流れから、「タワーの階数」と「つまようじの本数」を表の左側に記入しました。

ここから、⬜︎と◯で表現しようとした子が前に来て説明を始めました。
(ここで、説明しやすいように三角柱の見取り図のシートを子どもに渡しています。)

C「上の底面をとって、こっちに移します。(黒板右の赤い線)すると、ここの部分が6本になるんですよね。ここの部分が1階部分になって、1階=6本になります。で、まずタワーの階数が1なので、僕が作った公式は6×⬜︎(階数)で、さっきの底面が3本なので、こっちにもってきて、+3になるんですけど・・・」
T「今困っているみたいだけど、この公式はよさそう?」
C「伝わらないなあ」
C「つまようじの本数を◯したからなんじゃない?◯じゃなくて、つまようじの本数の言葉だけで表した方がいいよ」

ここから次の子が他の式を書きました。(下の写真、下方の式)
また、表にタワーの数0階を付け足しています。
C「付け加えがあります。+3ということはあまり3じゃないですか。」
この子は、上の表からのつまようじの本数を6で割っていくと全部3あまる数になるということを見いだしていました。

 ここで私自身、下の式を書いたこの意図を汲み取ることができず、上の式を具体的に表現したものとまとめてしまいました。
この後、他の子が前に出てきて⬜︎の中に具体的に数値を入れていきました。
C「6×6+3で、6階部分で考えるんですけど、◯=39で、39本になります」
T「確かに、表と比べても数値が同じになっているね」
T「この式は何を入れても、いつでも成り立つの?」
C「何を入れても成り立ちます」
T「0でも?」
C「0だったら、0+3で3になって成り立ちます」
T「じゃあ公式として成り立つのかな?」
C「成り立ってます。変わり方がわかる。これは比例してます」
ここで、比例に関係する発言が出てきたので、子どもたちに問いました。

T「これは比例しているの?」
C「比例してない」
C「比例しているのはしているけど難しい比例というか・・・」
T「ちょっと話し合って決めてみて、比例していると思いますか?比例していないと思いますか?」
 ここで一度、近くの友達と話し合って比例しているか考える時間をとりました。その際に、「比例の定義」に返って考えている子を見取り全体で共有しました。

C「僕は比例していないと思って、理由は、1つの数ともう1つの数が何倍したら、もう一つの数も何倍になるというのが比例になるから」
ここから全体で、表を使って比例の定義を辿って比例していないことを確かめました。

T「ここは?」
C「2倍しているけど、もう片方は1.666・・・倍」
T「ここは?」
C「3倍しているけど、もう片方は2.333・・・倍」
T「これは比例していますか?」
C「比例はしていません」
C「下だけみたら、下だけできまりはあるね。3倍、5倍って」
 先ほど難しい比例と表現していた子が、タワーの階数、つまようじの本数を別々に見るときまりは存在していることを見いだしていました。


 ここから、子どもたちに自分たちのオリジナルタワーに戻って、自分のたちのタワーは式で表すことができるのかを確かめていきました。



 ここでは、オリジナルタワーの増え方を数えてみたり、図化しながら考えてみたりする中で立式を行おうとする姿がありました。

 しかし、この活動の中で三角柱のモデルタワーにまだ他の式があると、まだこだわって探究を続ける姿もありました。

 表のおけるタワーの階数を今回は0をつくって考えた子がいたため、授業の最初は出てきませんでしたが、表をそのまま使うと表すことができる式を考えている子がいました。ここでオリジナルタワーの式を全体で共有すると思考が発散してしまうと考え、もう一度新しく出てきたそのモデルタワーの式を共有することを考えました。(下の写真の式です)

T「最後、また戻っちゃうけど、この式の意味はわかりますか?」
C「あ!◯◯さんと一緒だ!」
C「最終的にここの部分を足しちゃうわけだから、1階層を例えば、8階だとするとここの⬜︎に8を入れて、ここの1は、一番最初のここの1階層なんですよ。つまり、底面が1面しかない三角柱が7個あって、一番下の三角柱を足して、6×7+9で51になります。伝わります?・・・」
C「底面一個しかない場合は三角柱じゃないよ」
T「そこにこだわるのも大事かもね。◯◯さんはここを固定して考えていたね(三角柱を指さして)。そして、こちらの式はここの部分を固定していたね。(三角柱の底面部分を指さして)どうですか。式で表すとよかったことはありますか?」
C「わかりやすい」
C「最終的に公式の意味を知らないといけない」
 無理やり3つの式を私自身が統合してしまいました。ここは研究会でも意見をいただきましたが、他の場面、例えばこの前に出てきていた2つの式を比較させたり、子どもが説明する際にこちらから三角柱の見取り図を渡すのではなく、もっと思考をストレートに表現できるモデルを用意することなど、子どもから統合する見方を引き出す方法をとっていくべきでした。

ここから振り返りをかく時間をとりました。
 この振り返りは、具体的な数値を用いて計算して必要なつまようじの本数を求めています。
また、表に表すことで比例しているか比例していないかがわかることをまとめています。きまりがあれば比例しているのではないかと考える姿に立ち止まり、比例の定義にもう一度立ち止まったからこそ出てきた考えなのではないかと思っています。


 途中で1階部分の扱いをどうするか迷っていた子の振り返りです。1階部分の形が確定したところから、あとはどのように増えていくのかをまとめています実際に具体物があったからこそ、どこの部分が増えているのかを指さしながら考える姿がありました。その姿が式を決めるのに寄与したように感じています。

 始めに12×5と計算をして求めていたこの振り返りです。12×5はどこの部分にあたるのかを具体物をもとに考える姿がありました。その中で、+6の部分を見付け、よりよい式の形へと変化させています。










  ここまでの振り返りは、ふたの部分(三角柱の底面)に言及した振り返りを取り上げました。底面部分を後から足すことについて、式でわかる姿や図でわかる姿、様々な方向からアプローチして、その中でより自分にとってわかりやすい方法を自覚しているのではないかと感じています。6階だからこそ、図を使って考える子が序盤は多かったように感じます。だからこそ、どこの部分がまだ計算されていなかったのか、思考する姿があったように思います。







 これらの振り返りは、この時間で見いだした三角柱のモデルタワーやその他のオリジナルタワーに必要なつまようじの本数を考えていく中で、文字や言葉の式で表し、どの形にも適用できる式を見つけ出していることをまとめています。このように複数の式、考え方を統合して捉えていこうとする姿勢を価値付けていきたいところです。また、このような学び方は、モデルタワーを全体で共有し、オリジナルタワーの本数を求めることを個に委ねてきたからこそ、見方・考え方を発揮することができたのではないかと感じています。



 最後に、まだ解決しきれていないことを記述した振り返りもあります。オリジナルタワーで考えた際に、より複雑な形となるため、きまりが見付けられず、式で表すことができないという困りごとをもっています。上の振り返りで考えている「どの角柱にも成り立つ公式」を見いだしている子たちの考え方に出合うことで、「どのタワーにも共通して言えるつまようじの増え方」に着目することができればと考えています。



 研究会では、子どもたちの思考をどのようにすれば相手によりよく伝わったか、子どもたちの思考と思考をつなぐモデルについて、たくさんのアイデアをいただきました。また、この発話を書いている途中にも「ここで立ち止まるべきだった」というポイントがたくさんありました。子どもたちが式を読むために必要な教師の出の部分になります。研究会では、子どもたちの学びの姿から、参加していただいた先生方だったらどこで立ち止まるか、授業中の教師の判断における選択肢をたくさん教えていただけました。

 今年度、「共に数学的価値を見いだす算数科学習」を研究してきました。その中で見えてきた成果もあれば、新たな課題もあります。そのためのヒントを研究会ではたくさんいただけました。
 また、さらに算数科で整理を行い、次年度の研究へと繋げていくことができればと思います。


 最後までお読みいただきありがとうございました。

算数科 津川


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