高学年だからこその具体的操作のよさについて(令和6年度研究発表会に向けて④)
公開日: 2025年1月3日金曜日
算数科の津川です。
今回は高学年だからこその具体的操作のよさについてまとめさせていただきます。
この1年間、高学年における具体的操作の有効性について研究を進めてきました。
まずは、「小数のわり算」で行った実践について、教科書に出てくるような題材の関する具体物を教室に用意しておき、それをもとに問題づくりをしながら小数のわり算の計算についての見方を広げていきました。例えば、具体的操作をすぐにできる環境があると、わられる数が小数になる問題を子どもたちは多く作るのですが、次第にわる数が小数の問題に関して、「どう作ればいいかわからない」というような困りごとが表出しました。そこで、問題を作っては具体物に戻って確かめてみるというような姿がありました。その過程で、わる数が小数の場面を等分除と包含除の関係に着目しながら考察していきました。さらに、「あまりのあるわり算を考えたときは、2.5÷0.7におけるあまりの数の表し方について、そのあまりが4mなのか0.4mなのかをテープを用いて考察する姿がありました。具体物を示しながら考えることで、どの部分が0.7なのか、どの部分があまりなのか、数と具体物を対応させながら説明する姿がありました。
次に、本校の夏の実践研修会で実践させていただいた「分数と小数、整数の関係」では、2Lのジュースを3人で分けたときの1人分のジュースの量の表し方について考えていきました。1〜4Lと3人〜5人の班でそれぞれのジュースを実際に分けてみるという状況をつくり、その中で2Lのジュースの量を与えられた3人班の困りごとを取り上げ、みんなで解決していきました。「目の前のジュースの量はきれいに分けられているのに、数字だとうまく分けられないという」気持ちから、どうすれば数字でもきれいに分けることができるのかを考えていきました。問題解決の途中では実際に1Lの容器を3つと2Lのジュースに見立てた水を用いて分けてみて、それを図と関係付けて考える姿もありました。
2つの実践の中から見えてきたことは、子どもたちが具体的操作をすることで、その中から数学を見いだし(数学化)、自らの答え(問題解決によって得られた結果)に対して確かめ(意味付け)を行うことの動機になったということです。例えば、0.4mなのかどうかを確かめるためにもう一度テープを使ってみるなどの学習法略を子どもたちは獲得していたように感じました。しかし、他の問題や別の式が出てきた際にもう一度具体物へと戻るような姿はあまりみられなく、具体的操作をすることの価値を実感しているとまでは言えない状況でもあります。また、具体的操作をすることにより、それに伴う数学的表現が、その操作とつながりのあるものになるということです。例えば、テープを使った問題のときにはテープ図や線分図でその状況を表し、水の量の時にはLます図にその状況を表してみるというようなことです。しかし、Lます図の方に関しては、具体的操作のイメージに引っ張られ、図に2Lの量を描き込む線や3等分する線が数学的に考察しにくいような状況も生まれました。
このようなことから、具体的操作が「数学化」の場面ではうまく働いている状況があるけれど、問題解決の過程で具体物と数学的表現を何度も往還するのではなく1往復になっていることや、得られた結果の意味付けに再び具体物を用いようとする子どもが多くはないことの課題が見えてきました。(必ずしも、具体物に返らなければいけなく、根拠として用いる一つの手段として具体的操作を捉えています。)しかし、その他の単元(分数のたし算・ひき算)の学習において、具体物を用いて考えてみようとする姿など、年間を通して継続的に行うことで価値を見いだしている姿は見られてきています。具体的操作は自ら作り上げた数学的表現とは異なり、必ず1Lや1mなどの定数をもっています。したがって、問題解決の過程や結果の意味付けに対して具体物を用いて確認することは、抽象的な数のイメージを五感によって感じとり、より意味のある数学へと解像度を上げるものだと考えています。
さらに数学のよさを感じるためにも、何の学びに対して、どんな活動の中で具体的操作をするのかその相性自体も研究していかなければいけないと感じているところです。
これらの実践をもとに、今回の実践は具体物として「つまようじタワー」が存在します。子どもたちはこの中から2つの変化する量を見つけだし「数学化」を行っていきます。これまで、形として関わってきたタワーですが、知りたい「つまようじの本数」とわからない「何階分製作するか」ということを考え、数学的表現を用いてうまく表していきます。ここでの数学的表現は、見取り図のような表現、1階のとき、2階のときと1対1対応させた帰納的な考えからの表、式表現などが考えられます。
しかし製作物がタワーであるので、より高いものを作りたいという思いが表出することをねらっています。そうなったときに、より高いものを作るとすると上記の数学的表現の中でも式のよさが際立ってくると考えています。より抽象化された数学的表現を用いるということは、その過程で数の意味から離れてしまうということも懸念されます。
そこで重要になってくるのが具体的操作です。子どもたちの目の前には自らが作り上げてきた完成途中のタワーがあります。
そのタワーを指で数えてみたり、つまようじ(操作ように3本ほど渡しておきます)を当てはめてみたり、色を塗ってみたりしながら式表現などと対応させて、どの部分がどのように増えているのかを考察していく姿を目指します。そうすることで数学的表現と具体物を「数学化」のところだけで1往復するのではなく、問題解決の途中でも何度も行き来する往還を目指し、自他の得られた結果に対し、その意味を考えるために具体物に返って、意味を伴った式へとつなげていこうと考えています。
今回は、高学年だからこその具体的操作のよさについてまとめてきました。先生方からもご意見をたくさんいただきたいなと思っています。
次回は、今回のブログでも多く出てきているタワーができる過程(角柱と円柱の単元デザイン)に触れていないので、そこの部分をまとめていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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