数のまとまりをつくり出そう(第14時)

公開日: 2025年11月21日金曜日

 本校算数科の内田です。

今回は、研究授業でもあった第14時の実践についてお伝えします。

 これまでの学習で、同数累加、乗法の性質、交換法則、分配法則によって、乗法の積を求めたり、九九を構成したりしてきた子どもたち。少しずつ、自分の「お気に入り」を見付けつつあります。

 しかし、そのお気に入りが「どうしてお気に入りなのか」については、「分かりやすい」「簡単」にとどまっている状況です。このような子どもたちが、乗法の積を求めたり、構成したりするときに、意図をもって乗法の性質や計算法則等を用いてほしいと思っています。

 なぜならば、それによって更に算数をたのしめるようになると考えているからです。算数では、答えを求めることはもちろん、その過程も重視されています。九九を覚えることは楽しいかもしれません。なぜなら、覚えてしまえば、考えずとも答えがでるからです。ただ、そのような楽しさばかりでは、数学的活動をたのしむ子どもたちには育たないと思います。

「交換法則を使えば、習ったことを使えるから、すぐに答えが出る」「分配法則を使えば、10を超えるかけ算も1回たすだけで簡単にできる」「同じ数ずつたすのは、九九をつくるのに役立つな」等、子ども自ら、このようなことに気付いてほしいと思います。すなわち、様々な方法のよさに目を向けてほしいということです。

 本時で「お気に入り」の理由まで考えることは、よさを考察することにつながっていきます。「分かりやすい」「簡単」でとどまるのではなく、「なぜ簡単にできるのか」ここに迫っていきたいと考えました。

 さて、本時では、算数絵日記を読むことから始めました。あいらさんやみおさんの算数絵日記には、「りくとさんの考えだとパパっと計算できる」「れいあさんのは最後にたすだけだから簡単」と、「簡単な理由」に迫るものでした。このあのねを読むことで、子どもたちの意識が単なる求め方の考察から「簡単な」求め方の考察になるようにしました。

 その後、えいしさんが撮った教室ロッカーの写真(3×3)を提示し、「実際はまだあるよね?」と言いながら、続きの写真を提示していきました。

 子どもたちは、「3×15だ!」と式を立てていきました。その後、本時では、同数累加での式を確認し、板書しました。すると、「面倒くさい」「大変」などの声が聞かれたことから、本時のめあてを考え、解決にうつりました。

 取り上げた順は、次の通りです。

①同数累加(れいあ) 3+3+3=9のように、途中で9のまとまりをつくる。

②交換法則(あやこ) 15+15+15と書く。

③途中からの乗法の性質(はな) 30+3+3+3+3+3とする。

④分配法則(あいら) 15を5と10に分ける。

 めあての設定前に扱ったはずの同数累加ですが、子どもたちは、計算過程が異なると「ちがうもの」と捉える傾向があります。また、れいあさん自身が「計算ミスをしてて…」と困っていたので、取り上げました。ここで改めて、同数累加の解決過程を明確にすること、そしてミスが生じ得ることを明らかにするためです。

 ③の場面では、子どもたちが次のような反応をしていきました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

T:すみれさん、どうぞ。

C:あれかな。とぶかな。

(はな:上に10・11・12・13・14・15と書いていく。)

しょう:1とび?1とび?

はな:ちがう、ちがう。3とび。

(はな:下に30・33・36・39・42・45と書いていく。)

えいし:あっ、そういうことか。

えいた:ならっているやつか。

T:すみれさんの気持ちわかる?どうしてこうしたの?

C:ならってるやつ、したんだよね。

T:何を習っているの

しょう:30のやつ。それを習っている。

えいし:もうやらなくていいから、途中からした。

えいた:前のりくくんのやつも(そうだった)。

りいさ:習っているからやらなくていいもん。

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 このように、「習っていることを使えば、計算をやらなくていいこと」が明らかになりました。ここでたす回数が、同数累加と比べて少なくなることも扱えればよかったのですが、その後、あいらさんの分配法則を扱いました。分配法則でも、「習っていることを使う」「たす回数が少ない」ことが明らかになります。

 ただ、今回はなかなかそこに向かうことはありませんでした。「習っていることを使っている」は出てきたのですが、たす回数よりも、10と5に分けたことによる「たしやすさ」が強調されてしまいました。

 その後、少しずつ、このような「よさ」に関する発言が出てきたので、「みんなのお気に入りは?」と問いました。しかし、やはり「たしやすさ」「3をたすのが分かりやすい」等の発がんが多く、あまり「たす回数」にまで意識が向かなかったので、ブロック操作をして、たす回数が多いことに気付くことができるようにしました。

 ただ、時間が足りなかったこと、ブロック操作をする必要感が子どもにとってはなかったことから、あまり有効な手立て・時間とはなりませんでした。ただ、ブロック操作により、さくらさんが「何回たすかがれいあさんとはなさんの考えでは違う」というと発言しました。

 この発言から、「習ったことを使うこと」「たす回数が少ないこと」が「簡単」の理由になっていることを確認し、本時の学習を終えました。

  事後検討会では、次のような成果と課題が出されました。

〇子どもの学ぶ姿については、「共に学びにひたる」姿に近いものがあったのではないか。特に、学びの足跡に子ども自ら注目しながら解決に向かう姿や他者の解決方法について聴くー語る姿があった。

〇分配法則や乗法の性質を活用し、解決する姿があった。

●「よさ」に気付くまでにはいたらなかった。ブロックを使って、たす回数には注目できたものの、子どもの思いとしては、ブロックを欲していなかった。

●「よさ」を捉えるには、多様な方法の比較に加え、「時間」すなわち、これまでの学習との比較があるべきだった。

などが出されました。このような指摘を受け、今後、

①第2の課題の在り方(教師の発問、第2の課題を解決する手立て)

②「共に学びにひたる」ための要件

③子どもの「早い思考」と「遅い思考」の捉え

について、もっと考察を深める必要があると感じました。(③については、同数累加に固執すうる子どもがおり、その理由を考えた際、「同じ数をたせばよい」という手続きの単純さを好んでいると思います。それ自体はいいのですが、やはり、「解決過程」を大切にすることは、じっくり考えるような「遅い思考」が重要です。※ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」(早川書房)を参考にしています。)

本時の板書


かなり長いブログとなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。かけ算(2)についても、この後、少しずつ更新していきますので、お時間ある方は、ぜひお読みください。


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