図を使って倍の見方を広げよう~小数の倍①~
公開日: 2024年2月7日水曜日
いよいよ研究発表会に向けた小単元「小数の倍」に入りました。
全部で3時間計画しているうちの第1時です。
本時では、2量の関係の捉え方として、差の見方と倍の見方があることを明らかにした上で、新たに「小数倍」と出合い、その意味に疑問をもって学習の見通しをもつことをねらいました。
問題から提示し、「何倍になるのか」を教師から問うことは簡単ですが、そうすると「『小数倍』があること」が前提となってしまいます。そこで、子どもたちから「倍の見方」を引き出し、そのような2つの数量の関係を見つけていく中で「1.5倍ってどういうことかな?」という問いをもたせたいと思いました。このようにすることで、「1.5倍ってよくわからない。」「わからない友達にその意味を説明したい。」「この説明だと分かってくれなかった。どうしよう。」と、一人一人が自分なりの問いや思いが生まれると思います。
さて、そこで扱ったのは子どもたちの通学時間です。事前に把握していた通学時間(多くが約10分や約25分という概数で答えている)を使って、その関係を考えていくことにしました。多くの通学時間が10分や20分などでかかれており、0.1にあたる大きさが捉えやすいこと、差の見方や倍の見方の両方ができることがよさだと考えました。
それでは、実際の授業の様子についてお伝えします。
はじめに、通学時間をかいたカードを「みんなに関係ある数だよ。」と言って、「10」「15」「20」と提示していきました。すぐに、「5の倍数だ!」という気付きや「5ずつ増えている」という差の見方が出されていきます。そして「40」を提示すると、「2倍だ!」と倍の見方で数を捉える子が出てきました。
そして、通学時間が書かれた表を提示しました。
提示された通学時間を見に前に来る様子
子どもたちは自分や友達の通学時間に興味津々。
「え~!あいかさんは、そんなに時間かかるの?」
「たいしさんは、めっちゃ近い!」
そして、「じゃあ、今、関係を見ていったように、自分と友達の関係を調べてみようか?」と問いかけ、めあてを設定しました。
まずは、差の見方で関係を捉えていきました。ここでは、いろいろな差がありすべての差が(計算して)わかること、同じ10分差でも30-20=10、20-10=10のように2つあることを確認していきました。
次に、本時の中心となる「倍の見方」で関係を捉えていきました。次のような反応が出てきました。
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たいし:先生、倍ができない人がいます。
ふみや:たかしとかせいはとか。
T :え?できない?
C :小数っていいのかな?
C :えーできないんじゃ?
T :倍ができない人っているの?
たいし:え~と…
きりと:でも小数使えば…。
ふみや:整数だったらできない。
ひでこ:わり切れない。できない。
T :今言っている「できない人」ってだれかな?
ゆうた:せいは と しゅう。
ひでこ:30以上はできないよ。
しゅう:30分以上の人はできないよ。
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ひでこさんや、しゅうさんの発言から、「整数倍(2倍)にするとできない。」と捉えていると見取りました。つまり、「小数倍」を想定していないと思ったので、「倍」ができないと思ったわけを問い返しました。
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ごらん。
こうた:30×2したら、60分になってしまうからできない。
てつや:そう、そういうこと。10と20だったら2倍なんだけど、10から
15だとできない。小数ならいけるけど。
T :10×2以外にできるのってある?
きりと:3×5=15
T :だれの何倍?
きりと:たいしの5倍がそらと。
はる :こうたの2倍がてつや。
T :わかった?(こうたの考えに首をかしげていた そらと がうなずく)
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ここでの子どもたちの「倍ができる」には、二つの意味がありました。
①2倍したら50分以内の誰かと同じになる。(30分以上は2倍をすると60分を超えるのでできない。)
②整数倍ができる。
そこで、×2や×5が「整数倍」であること(②のことを言っていること)を確認し、10から15ができない理由を問いました。すると
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たいし:だって小数になるのかな?
T :小数で表すのであれば、何倍って言えそうなのかな?
たいし:1.5倍。15÷10で。
てつや:これはあっている。
T :これまで整数で倍をしていきたよね?小数で倍を表してもいいの?
C :え~? / たしかに。 / (首をかしげる。)
きりと:いいんじゃないの?
ふみや:ニュースでもいっているからいい。
T :整数だといいんだよね。これまで2倍ってどういうことだったかって
いうと?
てつや:2倍って2こ分。
T :じゃあ、1.5こ分ってへんじゃない?(多数の子がうなずく)だと
したら、1.5倍ってどういうことかな?となりとはなしてごらん。
C :10が1.5こ!/ 1と2分の1
あいか:2分の1が3つ
はる :なんでそうなるの?
T :どう?うまく説明できそう? (3分の1が挙手)
ちょっと難しそうだった人? (半数以上が挙手)
じゃあ、このことを次は、考えていかないといかんね!
本時の板書
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この後、ペアで今日の学習を話しながら振り返り、算数日記をかく時間にしていきました。
算数日記では、14名が1.5倍の意味を説明していた一方、11名が分からないから明らかにしたいという記述をしていました。
意味を説明していた14名のうち、ほとんどが「1の半分は0.5だから、1+0.5=1.5」という説明にとどまり、「倍の意味を広げている」とはいえない説明でした。
次時では、「1.5倍」の意味を考えた上で、「その考え方は本当に正しいのか?」と問い、「1.8倍」の意味を考察していきます。このようにすることで、半分という捉え方では小数の倍を説明できないことに気付かせるとともに、0.1にあたる量に着目させていききたいと思います。
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